こんにちは、現役内科医の橋本将吉(ハシモトマサヨシ)です。
先日、ある結婚式で多くの出席者がノロウイルスによる食中毒を発症したニュースが報じられました。
衛生面がしっかりされているはずの結婚式場。なぜこのような感染が広がってしまったのか?
今回は現役医師の視点から、ノロウイルスについて詳しく解説していきたいと思います!
手洗いや衛生面がしっかりされているように見えても、ノロウイルスはほんの少しの油断や「見えない感染経路」から一気に広がる、非常に感染力の強いウイルスです。
私はこれまで、内科医としてノロウイルスの患者さんを診察してきました。
毎年のように「こんな場所で?」「どうしてここから広がったの?」という声を聞くたび、ノロウイルスの見えない怖さを痛感しています。
ノロウイルスは冬に流行するものと思われがちですが、実際には季節問わずに発症する可能性があります。
大切な人を守るために、知っておいていただきたいことばかりです。
最後までご覧いただき、参考にしていただけますと大変嬉しいです!
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ノロウイルスは、感染性胃腸炎の原因となる代表的なウイルスで、特に冬に流行しやすいことで知られています。
しかし、発生は冬に限らず一年を通して報告されており、季節問わない「食中毒」原因ウイルスとして、医療現場でも警戒されています。
このノロウイルスは、主に汚染された食べ物や人との接触、またはウイルスが付着した物の表面などを介して感染します。
つまり、食中毒のように見えても、その感染経路は多岐にわたるという点が特徴です。
ノロウイルスの特徴は、その驚異的な感染力です。
感染に必要なウイルスの量は、わずか10〜100個程度とされており、インフルエンザの数百〜数千分の1というレベルです。
例えば、調理器具に少しでもウイルスが付着していた場合、目に見えないほどの量でもウイルスの感染が成立することもあり、実際に食事を介しての集団感染が後を絶ちません。
多くの方がアルコールでの手指消毒に安心感を持っているかと思います。
しかし、ノロウイルスは「エンベロープ」と呼ばれる脂質の膜を持たない構造をしており、一般的なアルコール消毒ではその構造を破壊できません。
つまり、アルコール消毒だけでは感染経路を完全に断ち切ることは難しいです。
そのため、ノロウイルス対策は石けんによる丁寧な手洗いが最も有効な予防策とされています。
ノロウイルスは、環境中でも非常にしぶとく生き残るウイルスです。
乾燥した冬の空気や低温環境でも長時間生存するため、ドアノブや手すり、テーブル等に付着したウイルスが感染源となることも少なくありません。
また、気温の高い夏でも、食品や調理器具の管理が不十分だと感染は広がります。
実際に、夏のバーベキューやお弁当等をきっかけにした食中毒事例も報告されています。
ノロウイルスに感染した方は、症状が落ち着いたあとでも1週間以上にわたってウイルスを体外に排出し続けることがあります。
特に家庭内では、感染者がトイレを使った後ドアノブに触れたり、同じ食器を共有したりすることで、気づかないうちにウイルスが広がってしまうことが少なくありません。
このような「見えない感染経路」があるため、衛生管理を徹底することがとても大切です。
スーパースプレッダーとは、ノロウイルス感染のなかでも、周りの人に特に多くのウイルスを広げてしまう人のことを指します、
実は、感染者はただウイルスをたくさん排出するだけでなく、免疫の状態や普段の生活習慣、手洗いの仕方等も影響しています。
特に症状が治まった後も、長くウイルスを体から出し続けるため、本人も気づかないうちに周囲に感染を広げてしまうことがあります。
だからこそ、症状がなくなっても一定期間手洗いや消毒を丁寧に続けるようにしましょう!
特に注意が必要な人とは?
ノロウイルス自体は、通常数日で自然に回復するウイルスですが、怖いのはその激しい症状と脱水です。特に高齢者や乳幼児は体力が落ちやすく、場合によっては点滴治療や入院が必要になることも珍しくありません。
自己判断の様子見は危険?
医師としてよく耳にするのは「ちょっと吐いただけだから様子を見よう」と判断されたケースです。
しかし、数時間のうちに嘔吐や下痢を繰り返し、ぐったりしてから受診される方も多くいらっしゃいます。
また、感染者本人だけでなく、看病する家族に次々と感染が広がってしまう可能性があります。だからこそ、症状が軽くても自己判断せずに早めの受診をすることが大切です。
ノロウイルスによる食中毒を防ぐために、次のようなことが基本の対策になります!
・石けんを使用した手洗い
30秒以上しっかりと手を洗うことで、感染経路となるウイルスをしっかり落とすことができます。しかし、よく使われるアルコール消毒は、ノロウイルスには効果がありません。
・アルコール消毒ではなく、家庭良漂白剤(次亜塩素ナトリウム」を薄めたもので消毒するのがおすすめ!
特にトイレのドアノブや調理輝度、よく触る場所はこまめに消毒しましょう。
・嘔吐物や下痢の処理には、使い捨ての手袋・マスク・ペーパータオルを使用
適切な処理、消毒をすることで感染経路を断つことができます。
ノロウイルスによる食中毒には特効薬はありません。
治療は水分補給や食事の調理など、対症療法が中心です。
しかし、次の症状がある方は早めに医療機関に受診してください!
・嘔吐や下痢が12時間以上続いている
・水分が取れず、尿が出ない
・子どもがぐったりしている、高齢者が食事をとれない
ノロウイルスは、一見ささいな場面からでも感染が広がるウイルスです。
今回の結婚式のように、「きちんとしている場」だからこそ油断が生まれやすく、対策の抜け漏れが生じがちです。
大切なのは、「うつらない」「うつさない」ための正しい知識と行動です。
そして、万が一感染してしまったときには、自分だけでなく、周囲の人を守る行動ができるように備えておくことが、何よりも大切です。
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最後までご覧いただき、ありがとうございました!
参考:HBC北海道放送
【執筆者】内科医 橋本将吉(ハシモトマサヨシ)
内科医。高齢者向けの訪問診療『東京むさしのクリニック』院長。2011年に「全ての世代が安心して生活できる人生に」という理念の元、株式会社リーフェホールディングス(旧株式会社リーフェ)を設立。将来の医師を育てる医学生向けの個別指導塾『医学生道場』の運営や、自らが『ドクターハッシー(内科医 橋本将吉)』というYouTubeで健康教育を行う。2022年9月に、健康や医学を医師から学ぶ事のできるサービス『ヘルスケアアカデミー』をリリース。ヘルスケアアカデミー事業の一環として企業や学校等でセミナーを開催している。また、2023年11月には現役の医師目線で日々を健康に暮らすためのアイテムを扱うライフスタイルブランド「ハシモトマサヨシ」を立ち上げ、健康に対する知識を発信しながら商品を展開している。「めざましテレビ」「ホンマでっか!TV」など多数のテレビ番組の出演、「世界一受けたい授業」「林修の今、知りたいでしょ!」など、人気番組の医療監修を手掛け、著書に『薬のトリセツ』(自由国民社)『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)などがある。
リーフェホールディングス:https://li-fe.co.jp/
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ハシモトマサヨシ:https://hashimotomasayoshi.co.jp/